相川祭りと祭りの合間にゆるゆる気ままに過ごす猫に導かれるように、椎隆信氏 回顧展が行われている其蜩庵を訪れました。
昭和42年の椎 隆信氏のお写真と、回顧展を開催された其蜩庵の椎ミチ子さんのご挨拶文。
突然に最愛の旦那様をなくされた奥さまの回顧展までのお気持ちがつづられており、心にしみます。
油絵・版画・水彩画、陶器への絵付け、本や新聞の挿絵などなど。
相川の役場にお勤めだったという椎氏の作品には、絵画などのほかイベントのポスターや案内看板など実用的なものもありました。
古民家の柔らかな光を受けて、清楚で美しい白いシュウメイギクが会場に彩りを添えていました。
入口の作品から拝見してゆきました。
奥の部屋に飾ってあった下相川の海を描いた青い絵の前から、しばらく動けませんでした。
佐渡で何度も出会った青と蒼と白い波に揺れる大きな清々しい海が、肩幅ほどの大きさの額縁に収められていました。
感情の起伏が少し激しい私は、ひとり車の中や海に向かって気持ちをあらわにしたことが何度かありました。そのたびに、海は私の小さな悩み（その時点ではとても大きな壁だったと思うのですが）を包み込んでくれました。
そんな穏やかで優しい、相川の日常の海が、そこにありました。
会場を訪れた他の方も『優しい色使いだね。』 『この絵、好きだわ。』など思い思いの言葉を口にしていました。
それぞれが、それぞれの作品に色々な想いを重ねることでしょう。
壁に掲示された作品のほか、テーブルの上には多くの作品がまとめられたファイルが並んでいます。
ゆっくり、ゆっくり ページをめくってみました。
3年前から佐渡を訪れるようになった私は、椎氏にお目にかかったことはありません。
でも、夜の相川で地域の人と酒を酌み交わしながらの会話の中で、何度そのお名前を聞いたかわかりません。
加茂の蔵元、加茂錦の広告用と思われる切り絵を集めたファイルや、離れて暮らすお嬢さんにあてた絵葉書など、椎氏の人柄が作品を通して伝わってくるようです。
多くの作品を集めたファイルの中には、高校球児であったと思われる息子さんが活躍した当時の新潟日報記事の切り抜きもファイルされていました。 ご家族の歴史も垣間見えるあたたかな回顧展です。
お店には、佐渡の陶芸・裂き織・草木染・ガラス・草履など多くの作品も展示販売されています。
そろそろ、はさみ岩に夕陽でも撮りに行こうかと外に出たところ、今まさに夕陽が海に沈むところでした。
思った以上に時間が流れていました。
いつもなら、電線が邪魔だなと感じてしまうのですが大海原に揺られる帆船のマストのように感じられ、美しい夕陽を眺めながらタイタニック気分を味わっていました。
夕陽が沈んだ後も美しい夕焼けが相川を包んでいるようでした。
祭りの提灯が灯りました。
さて、再びお祭りを追いかけてみましょう。
椎隆信氏 回顧展は、今月30日までです。
其蜩庵（きっちょうあん） 椎 隆信氏 回顧展
開催日：2016年10月16日（日）～30日（日）
所在地：新潟県佐渡市相川上京町12
問合せ：0259-74-2550
営業時間：10時～16時
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